総量規制とは、貸金業者に関する規制法である貸金業法で定められたルールです。
2006年12月に抜本改正、その後段階的に施行され2010年6月には完全施行されており、消費者や事業者などが安心して金融機関から借入できるようになりました。
年収によりどのくらい借入できるかが決定されていますが、ルールには例外もあります。
この記事では年収として扱われる所得の範囲や、借入金の種類による除外対象や例外対象となる借入金についてご紹介します。
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総量規制は年収3分の1以上の融資を禁じる規制
ローンやキャッシングを利用する際に、その金額を借入できるかどうかが気になるという方は少なくはないでしょう。
また、実際に金額によっては断られるという経験がある方もいるかもしれません。その場合は、総量規制に引っかかっているというケースがあります。
総量規制とは、消費者や事業者を多額の借入から守るために定められたルールで、借入できる金額は「原則年収の3分の1の範囲内」までに制限するというものです。
これに違反して融資を行った場合、貸金業者が行政処分を受けます。
この総量規制違反は俗称で、法律上は「過剰貸付等の禁止」ですので、処分を受けるのが貸金業者というわけです。
総量規制が制定された背景には、多重債務者の増加があります。社会問題ともなった債務者の生活破綻から守るために規制が行われました。
公的な調査により、家計が逼迫している場合でも返済可能な額が年収の3分の1であると判断され、それにより総量規制の対象額が決定されました。
つまり総量規制は借入を阻むものではなく、返済能力を超えた借入金を背負わせないための公的なセーフティー機能ともいえます。
多重債務者の大量発生を防ぐ目的で出来た
総量規制が導入される前は、貸金業者が貸付を行うことのできる金額に上限はありませんでした。
そのため、借入金を返すために別の貸金業者から新たな借入を行い、それを返済に充てる。またさらにその借入金を返すために、と新たな借入を繰り返す多重債務者と呼ばれる人が多く生まれてしまいました。
金利の高い貸金業者からの借入金の返済のためにあらたな借入を行っているのであれば、その金利だけでも借金はどんどんと膨れ上がり、いずれは経済破綻を起こしてしまいます。
総量規制により、複数の貸金業者から借入を行っている場合、そのすべての合計が年収の3分の1を超えないようにとされています。
つまり、年収300万円の人がA社からすでに50万円を借入しているのであれば、B社からはあと50万円しか借入できません。
なぜならそれ以上の貸付を行ってしまえば業者が処分を受けてしまうからです。
貸金業者同士は信用情報機関により借入金などのデータを共有しているので、申告しなくても審査によりわかります。
総量規制の「年収」に含まれるのは4種類
総量規制により借入できる金額の上限は年収の3分の1までとなりました。では、この年収というのは具体的にはどの収入のことを指すのでしょうか。
貸金業法の法文によると、「当該個人顧客に係る基準額(その年間の給与及びこれに類する定期的な収入の金額として内閣府令で定めるものを合算した額)に三分の一を乗じて得た額をいう。」と表現されています。
つまり定期的な収入のことを年収として扱いますので、一時的な収入は宝くじなどの当選金などたとえ高額のものであっても対象外として扱われます。
まず定期的な収入として一番に思い浮かぶのは、会社などから受け取る給与でしょう。
また、同じく定期的に受け取ることのできる年金なども収入として扱われます。副業として不動産投資を行い、家賃収入などの定期的な収益がある方もいることでしょう。
また、個人事業主として所得を得ている場合も年収として扱われます。
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1.給与収入
年収として認められるのは、労働に対して得ることのできる収入のことですので、通勤手当や住宅手当などの各種手当も含まれています。
また、ボーナスなどの賞与も含まれた総額のことを示しています。
そのため、給与としての手取りではなく、税金や社会保険などの控除前の総支給額つまりは額面の金額が年収として扱われます。
同じ会社から支給されるお金であったとしても退職金などは一時的に得られる収入ですので、総量規制の範囲においては年収として扱われません。
この年収の証明はある程度の借入金であれば自己申告で構いません。
具体的には1社あたり50万円以内、複数業者からの借入総額が100万円以内であれば自己申告でよいとされています。
2.年金による収入
年金には大きく分けると2種類に分けられます。
1つは、国民年金、厚生年金、共済年金といった公的年金制度による年金です。
国民年金は、被保険者のすべてが加入する義務がある年金制度です。
厚生年金は、サラリーマンや公務員が給与からの天引きという形で加入しています。
共済年金は2015年9月までの名称で、公務員が加入するものでした。2015年10月以降は厚生年金と統一されていますので、それ以降に公務員として勤めている方は厚生年金に加入しています。
一方で、2015年9月までに共済年金の受給があれば、それ以降も共済年金として受給しているため、年金制度の名称として残っています。
もう1つは、個人が任意で加入可能な私的年金です。総量規制においては、公的年金も私的年金も収入として扱われます。
3.不動産の賃貸収入
一般的に、副業として営んでいる投資で得ることのできる配当金や株などの値上がり益といった収入は一時的な収入としてみなされ、年収として扱われません。
しかし、不動産の賃貸収入を副業として得ている場合は、安定性が高い収益とされるため年収としてみなされます。
この賃貸収入は、不動産の賃料や更新料、礼金や共益費を含んだ額です。
そのため、副業として不動産投資を営み、家賃収入を得ているのであれば、年収として扱われます。
4.個人事業で得た所得
個人事業主として、事業を営むことにより得た収入は年収として扱われます。
例えば、不動産の賃貸を事業として扱っている場合はこちらに該当します。
この場合の収入は、事業で得ることのできた売上金から経費などを差し引いた純利益のことを指します。
事業として不動産を取り扱っている場合であっても、不動産の売却など譲渡による所得があってもそれは一時的な収入とみなされますので、年収としては取り扱われません。
また、個人事業主の場合、年収として扱われるのは所得ですので、収入から必要経費を引いたものを年収として計算します。
総量規制には「除外」と「例外」がある
総量規制には、対象にならないつまり除外される取引と例外の取引があります。
まず、総量規制の対象となる取引は、個人と貸金業者が個人的に行う借入取引です。
その中でも特別に対象外となる取引もあり、それが総量規制の除外と総量規制の例外と呼ばれています。
除外も例外も対象外となりますが、2つの意味は異なります。
総量規制の除外とは、その対象となる取引は総量規制の借入計算には含めないという意味です。
一方で総量規制の例外とは、総量規制の借入計算に含めるが、年収の3分の1を超えていても返済能力があるとみなされれば借入が認められる取引のことを指します。
住宅ローン・自動車ローンなどは総量規制の「除外」対象
除外対象となるものは利用者が多く、年収が低いことを理由に借入が不可能であれば困る方が多いものが当てはまります。
住宅ローンは、不動産の購入や不動産の改良のための借入が当てはまります。
例えば、物件や土地を購入する場合、リフォームを行う場合などが除外対象となります。
また、土地の購入費用や着工金、中間金などの支払いのためのつなぎ融資も総量規制の除外対象です。
自動車のローンも通常であれば総量規制の対象となってしまいますが、自動車を担保とした自動車担保貸付であれば除外対象となります。
つまり、担保がある貸付は総量規制の除外対象とみなされます。
その他高額癒養費の貸付や、不動産の売却予定があり、その代金で返済できる借入も除外対象です。
おまとめローンや緊急時の借入は総量規制の「例外」対象
おまとめローンにより、顧客つまり借主自身が一方的に有利となる借り換えは例外対象となります。
具体的な例をあげて説明します。
年収300万円の人が金利15%のA社から80万円、金利18%のB社から20万円を借入しているとします。すると総量規制によりこれ以上の借入金はできません。
しかし、これらをおまとめローンとしてA社のみの借入にすれば、金利分顧客が一方的に有利になります。
そのため、A社に追加借入をし、B社に返済してまとめることが例外として認められています。
また、本人や同一生計者の医療費、葬儀費用や旅行先でのトラブルによって緊急で借入しなくてはならない場合も例外として認められます。
その他、個人事業主として事業を理由に借入する場合も総量規制の例外となりますが、確定申告の控えや事業計画書の提出が必要な場合があります。
カードローンは2019年現在すべて総量規制の対象に?
総量規制が導入された2010年時点では貸金業法という法律で定められているため、適用されていたのは消費者金融やクレジットカードによる借入金のみが対象となっていました。
銀行は貸金業法ではなく銀行法により運営されているため、総量規制に関係なく融資可能でした。
しかし、自己破産者の急増などにより、日本弁護士協会から金融庁に対して「銀行等による過剰貸付の帽子を求める意見書」が提出されました。
日弁連によると、総量規制により多重債務者の数は減少しているものの、銀行カードローンが規制対象外のままでは意味がないとしています。
また、総量規制の導入により銀行カードローンの貸付残高は3年で1兆5000億円以上の急増があります。
加えて、アンケート調査により年収の3倍近い額の貸付や無収入者への貸付など過剰な借入が確認されています。
そのため、銀行カードローンも規制の対象とする流れが出てきました。
総量規制の対象は基本的に消費者金融のみ
総量規制の背景には、消費者金融による過剰貸付と消費者の返済能力を超えた過剰借入が大きく関わっています。
それにより、貸金業法に則った消費者金融はすべて総量規制の対象となっています。
銀行はあくまで銀行法に則った運営をしていますので、総量規制の対象外です。しかし消費者金融の中には、親会社が大手銀行であるものもあります。
銀行の傘下にある消費者金融のことを銀行系消費者金融と呼びます。これらは規制対象となるのでしょうか。
結論でいえば、銀行系消費者金融は業務内容が貸金業ですので、規制対象となります。
銀行と資本関係があっても業務として取り扱っているのは消費者金融である貸金です。
そのため、2018年末の時点では総量規制の対象となる貸付は消費者金融による貸付のみでした。
銀行カードローンも2017年から年収3分の1以上の借入を自主規制
しかしながら、銀行カードローンによる過剰貸付が2017年4月に問題となりました。
それ以前は総量規制対象外のキャッシングが可能でしたが、2017年10月に銀行カードローンの最大手ともいわれる3大メガバンクがカードローンによる貸付上限を自主的に導入しました。
それに従って、各銀行カードローンの審査に変化が起こりつつあります。
まず、すべての銀行カードローンにおいて、2018年1月より即日融資が行われなくなりました。
これは、審査に警視庁データベースへの照会が加わり、反社会集団に融資をしないという情報提供システムです。
また、借入可能な額が年収の2分の1から3分の1程度に下げるという銀行もあります。
以前は300万円程度の融資額であれば収入証明が不要であった銀行が大半でしたが、自主規制後は50万円以上の借入の場合収入証明が必要な銀行が増加しました。
闇金や個人融資は総量規制外だが要注意!
では、多額の借入金が必要な場合はどうすればよいのでしょうか。
貸金業者の中には上限を定めていないところもあります。
貸金業者として無登録であり、法外な金利を取る業者いわゆる闇金とも呼ばれる違法業者です。
もちろん登録をしていない違法業者ですので、総量規制も無視しています。
金利が高いことはもちろん、消費者の返済能力を大きく超えた額であっても融資を行うことも少なくはありませんので、返済できないことも稀ではありません。
また、個人間で行う個人融資にも注意が必要です。消費者金融や銀行で借入する場合と異なり、審査や手続きなしで手軽にやり取りできることが魅力的とされています。
しかし、危険な側面もあり詐欺によりお金をだまし取られる、個人情報を奪われることがあります。
また、個人間融資だと思っていれば闇金などの悪徳業者が装っていることもあります。
金利が法外に高く返済できないことが多い
金融機関に定められた法律の中に、利息制限法という法律があります。
この法律によると、元本が10万円以下の場合は上限年20%、10万円以上100万円未満の場合は年18%、100万円以上の場合は年15%と定められています。
もちろん個人間融資であってもこの利息制限法が適用されます。しかし、個人間融資であれば〇%と書かずに、〇円の利息をつけて返済するという条件で書かれているものもあります。
一見して良心的な金額であっても、計算すれば法外な利息という場合も少なくはありません。
闇金業者からの借入金による利息はそれ以上になる場合もあります。
多くの闇金の利息は、トイチからトサンと呼ばれる割合です。
トイチとは10日で1割の利息、トサンとは10日で3割の利息という意味です。例えば、10万円の借入を1年間行った場合、利息制限法では20%が上限ですので、1年後の返済額は元金の10万円と利息の2万円で12万円です。
これがトイチの場合、10日ごとに10%の利息が付きます。
つまり10日後には10万円と利息の1万円で11万円、さらに10日後には11万円とその利息の1.1万円で12.1万円と、どんどんと借金がかさんでいきます。
この複利計算により、1年つまり365日後には324万円以上の返済を行わなくてはなりません。元本が10万円ですので、利息は3140%を超えています。
もちろん、実際にはこれほど利息を取られることはないでしょう。たいていは1年を待たずして回収が入ります。
トイチの場合、10日後に回収が入ると、元金と利息の合計を返済するように求めてきます。
もし返済不可能な場合は利息分だけでも支払うように求めます。
するとまた10日後には利息分の返済が求められますので、闇金業者は少額を常に返済要求することになります。
結果として元金はいつまでも残りますので、借入金の返済が難しくなるというわけです。
年収3分の1以上借りるなら銀行の担保付ローンを使おう!
金利が高ければその結果として返済が難しくなるということは計算上も明らかです。ですが、場合によっては総量規制である年収3分の1以上の借入が必要になることもあるでしょう。
そのような場合におすすめなのが、銀行の担保付きローンです。
不動産や自動車などを担保に銀行から融資を行ってもらえます。
担保のある貸付は総量規制の除外対象として扱われますので、年収の3分の1以上であっても借入することができます。
また、銀行に定期預金がある場合は、定期預金担保貸付を行うことができます。
総合口座通帳があり、その通帳内の定期預金に残高があれば限度額90%までの範囲内で貸付を受けることができます。
もちろん別途上限が定められている場合もあります。低金利で借入できるのも魅力の1つで、大手銀行であれば1%程度の金利です。